現代的な問題が表面化する2作目『優等生は探偵に向かない』
超傑作の自由研究〜から1年、2作目である『優等生は探偵に向かない』が刊行されました。
もうテンションだだ上がり状態。ピップがまた新しい事件に挑んで無双するのかな!?と胸を躍らせて書店に向かったものです。
が、物語は私の予想とは違う方向に進んでいきます。
まず、物語は完全に続編になっていて、再び1作目の登場人物たちがみんな登場します。
ピップはあの後街で一躍有名人になり、ポッドキャストで「グッドガールの殺人ガイド」という番組を持っていました。(私はYouTubeで活動しているので、ピップの立ち位置がすんなり入ってきて面白さ倍増です。(私と違ってピップはフォロワー数十万ですが笑)
前作、『自由研究には向かない殺人』での真相は、マックスという男がパーティで薬を盛って強姦をしたという出来事が発端となっており、マックスは裁判にかけられていました。
しかし、なんとマックスは裁判でなかなか有罪になりません。
ピップは理解できません。マックスがやったという証拠も持っているし、実質的な自供を録音までしていたのです。
正義とは一体なんなのかとピップの中に疑問が渦巻き始めます。
そんな中、ピップの同級生であり友人のコナーから、兄ジェイミーが行方不明になったからどうにか助けてほしいとピップは依頼を受けます。
ピップは今でこそ番組を持っていますが、以前の自由研究のような犯罪調査は二度としないと決めていました。なぜなら、前回は真実に辿り着きさえしたものの、大切な家族が犠牲になったし、周りの友人たちもたくさん傷つける結果に終わったからです。
ピップはどうして助けてくれないんだと言うコナーを前にして、自分にもできることがあると警察にいるホーキンス警部補を頼ります。
ピップは前回の事件の影響で警察とはそれなりのコネができていて、みんなが顔見知りになっていました。
ただ、ジェイミーの行方不明はまだ24時間程度しか経っていないし、ただの家出かもしれないし、今は他にやることがたくさんあると捜査を断られてしまいます。
ピップはコナーの話を聞いて、ジェイミーはただの家出ではなく、事件に巻き込まれていると感じていました。以前のように自分の直感を信じてほしいと警察に懇願しますが、それでも現在の状況では根拠がなさすぎて無理だと断られてしまいます。
ピップは必死なコナーとその家族を前にして、自分が何をやるべきなのかを考えました。
そして、ポッドキャストのフォロワーたちや今の自分の影響力を武器にして、ジェイミーを探し出すことに決めます。なぜなら、自分がやらなければならないから。
これが2作目にピップが挑むことになる事件です。
しかし、ピップには多くの試練が待ち受けていました。
まずはフォロワーが多くなりすぎたことによる、誹謗中傷、そしてあらぬ疑いの目です。
ピップは、「自分の番組でさらにお金を稼ぐために、自ら事件をでっちあげてそれを捜査してコンテンツにしているのではないか」という疑いをかけられて、毎日のようにアンチから心ない暴言や殺害予告が届くようになるのです。
そしてそれが同級生にも広まりはじめ、今までは友人だった人たちからもそのような目で見られるようになります。
そして、ピップは1作目のときにあったような天真爛漫さを徐々に失っていくんですよね…ここが見てて本当にキツい。というかリアルすぎる。他人事ではない。
ピップの精神が完全におかしくなってしまったのは、レイプ魔のマックスがなんと無罪で釈放されることになったときです。
レイプ事件の被害者は絶望し、悲嘆します。そんな彼女を同じように泣きながら抱きしめることしかできないピップ。
ピップはマックスの家に行き、窓をハンマーで割り、ペンキで「レイプ魔、お前を必ずつかまえてやる」と書き殴るという行動に出てしまいます。
さらにピップを追い詰めたのが、事件の真相でした。
ピップは相棒であり恋人となったラヴィの協力で、今回も真相にたどり着きます。
今回の事件は、「過去に起きた連続殺人の犯人に協力していた息子」が鍵になっていました。
過去に連続殺人を起こしたシリアルキラーはあらぬことか年端もいかない息子にその協力をさせていて、その成長した息子がリトルキルトンに身分を変えて暮らしていたのです。
そして、今回のジェイミー失踪事件の犯人は、そのシリアルキラーに姉を奪われた男でした。男の姉は、そのシリアルキラーの息子に一緒に来てと言われてついていき、その結果殺されてしまったのです。
そしてそのシリアルキラーの息子こそ、ピップがよく知る人物だったのです。
しかし、彼はそのことを悔いていました。自分はシリアルキラーである親に言われて何か分からず協力してしまった、でも自分がやったという事実は変わらない、それで失われた命がある。だから自分は死ぬべきなんだと自身の人生を諦めていました。
しかしピップは、彼がリトルキルトンにやってきてから、正しい人間として過ごしていたのを知っています。しかも彼はシリアルキラーに協力したときただの子供だったのです。彼がやったわけじゃない。
今回の事件の犯人は、ついに復讐相手に辿り着いたと彼を殺そうとします。
必死に懇願して止めようとするピップ。
しかしその願い虚しく、彼は銃で撃たれてしまいます。
ピップは死なないでと必死に声をかけますが、彼は亡くなってしまいます。
血まみれになって泣き叫ぶピップ。
そして、後日行われた彼の葬儀では、彼の正体を知った街の人たちが彼を罵倒しにやってきます。
ピップは悲しみと、そこから来る怒りが抑えられなくなっていました。そして日常的に、自分の心から銃声が聞こえるようになっていました。
2作目はまさかの、こんな終わり方をしてしまうのです。
ピップの周辺で起こるあまりにも辛い出来事、そしてアンチによる誹謗中傷、レイプ魔であるマックスの無罪釈放、そして悲しすぎる事件の結末。
物語の最後でピップは明確に精神を病んでしまっていて、読んでいるこちらとしては心配でなりません。1作目で読者はみんなピップのファンになっているので、同じ気持ちだったと思います。
そしてついにやってきました。完結作『卒業生には向かない真実』。
もう、読む前から暗い話になるんじゃないかと思ってましたが、本当に想像以上の衝撃でした。次ページへ続きます。