こんにちは!シュガーです。
7冠を達成した伝説的ミステリ『カササギ殺人事件』の続編である『ヨルガオ殺人事件』のゲラを創元社さんからいただき、発売前に読ませていただくことができました!
発売前の原稿が読めるだけでもたまらないのに、それがカササギ殺人事件の続編だなんて、とてつもない幸福な時間…。
というわけで、今回は早速『ヨルガオ殺人事件』の感想を語っていきたいと思います!
流石に発売前なので犯人や核となる部分のネタバレは当然なしで書いていきますが、話の構成などには触れるため、何も知らないまっさらな状態で読みたいという方はご注意ください!
また、前作『カササギ殺人事件』のネタバレを若干含みますので、そちらもご注意ください!
Contents
最強の作中作ミステリ、再び!
ホロヴィッツにはもう1つ、ホーソーンのシリーズがありますが、今回は『カササギ殺人事件』のシリーズの続編。
ということで、前作の主人公、編集者のスーザンと、探偵アティカス・ピュントシリーズの生みの親、アラン・コンウェイが今回の物語に関わってきます。
そして当然、作中作も健在。
今作の作中作は、アティカス・ピュントシリーズ第3作の『愚行の代償』です。
過去に起きた殺人事件の真犯人が、他にいる…!?
前作『カササギ殺人事件』でひどい目にあった主人公、編集者のスーザンは今は編集の仕事を辞め、小さなホテルの経営をしていました。
そこに突然、老夫婦が来訪してきます。
老夫婦も同じくホテルを経営しているのですが、8年前に老夫婦が経営するホテルで殺人事件が起きました。
既にホテルの使用人が犯人として逮捕されており、自供もして、現在は刑務所にいるのですが、老夫婦の娘セシリーが、突然妙な言葉を残して失踪してしまったのです。
老夫婦の娘セシリーは、アティカス・ピュント第3作の『愚行の代償』を読んだことで、あの殺人で捕まった使用人が冤罪であり、本当の犯人が別にいることを確信したというのです。そしてそれがきっかけで失踪してしまったと、老夫婦は考えます。
実は『愚行の代償』は、老夫婦が経営するホテルにアラン・コンウェイが行った際にアイデアを得た作品で、過去に起きたその殺人事件をモデルにした1作だったのです。
老夫婦は、アラン・コンウェイが既に故人となっているので、その編集者であったスーザンの元にやってきました。
スーザンはホテルの経営に行き詰まりを感じ、自身の人生にも満足が行っていない状態。
真実を明らかにし、セシリーを探し出してくれれば多額の報酬を払うという老夫婦の要求を飲んで、自身が調査に赴きます。
今回の作中作の意味合いは『カササギ殺人事件』とは少し違う!
前作『カササギ殺人事件』では、編集者のスーザンと同じ目線で上巻の最初からアラン・コンウェイの『カササギ殺人事件』を読み進め、そして最終章が抜け落ちているということにスーザンと読者が同時に驚くという構成でした。
そしてそこから現実の事件の調査に〜という流れでしたが、今回はどちらかというと逆で、
- スーザンは第3作『愚行の代償』の内容はいやというほど覚えている
- まずは現実の事件の調査に行き、一連の情報を収集したあとで、『愚行の代償』を再読する
という構成になっています。
ここで面白いのが、スーザンは『愚行の代償』の内容を覚えているのにも関わらず、実際の事件の情報を収集しても、真犯人が全然わからないということです。
セシリーは『愚行の代償』を読んだことで真犯人に気づいたとしっかり明言していたため、『愚行の代償』の中に真犯人を示すヒントがあるのは間違いないのに。
そこでスーザンと読者は、実際の事件の情報を収集した後で、
アラン・コンウェイは『愚行の代償』のどこに真犯人を匂わせるヒントを隠したのか
を探しながら、『愚行の代償』を読むことになります。この構成が抜群に面白い!!
終盤の連続した盛り上がりはミステリ史上最高の贅沢
作中作の『愚行の代償』は今回もかなりのボリュームで、1つのミステリとしてしっかり楽しめる出来になっているのは前作同様。
『愚行の代償』の犯人が明らかになるところもかなりの盛り上がりを見せてくれます。
普通のミステリなら当然ここのカタルシスで終わりなのですが、『ヨルガオ殺人事件』はここからの盛り上がりがとてつもないです。
作中作『愚行の代償』の犯人が明らかになるところで読者としては1度大きな盛り上がりがあるのに、『ヨルガオ殺人事件』はここから
『愚行の代償』と現実の殺人事件をリンクさせた推理パートが始まるからです。
これがめちゃくちゃアガる。というか贅沢すぎる。ラストにサビが2回連続でくるみたいな(この表現力のなさ)
- 『愚行の代償』の登場人物は現実の誰をモデルにしているのか?
- 『愚行の代償』で殺された人物と犯人だった人物に意味はあるのか?(実際の事件と比べてどうだったのか?)
- セシリーが現実の殺人犯を確信するに至った表現はどこにあったのか?
これをスーザンが丁寧にメモしながら推理を進めていきます。
かなり整理してくれるので、読者側としても本気で当てに行きたくなるような構成になってるんですよ。
ミステリ好きならここは堪らないと思います。
いきなり最後に種明かしされるより、語り手が丁寧に推理を進めてくれると面白さが何倍にも膨れ上がるのは私だけでしょうか?
というわけで、作中作の『愚行の代償』を読み終わったのは夜中の2時半を回っていたのですが、もう寝ることなんて気にせず朝4時まで読んでしまいましたとさ。
その結果は圧倒的な満足感です。素晴らしいの一言しかないです。
ツイートもしましたが、感想を一言でいうなら、今年の賞も『ヨルガオ殺人事件』が総獲りだろうなというところです。
ホーソーンシリーズも抜群に面白くて大好きですが、やっぱりミステリとしてはこっちのシリーズのほうが好きかも。
最近のミステリだとTOP2がこのスーザン/アランシリーズとホーソーン/ホロヴィッツのシリーズかもしれないwそれくらいホロヴィッツ無双状態に感じる面白さです。
今は他の人の感想が全然読めないことが寂しくてしょうがないので、早く発売してほしいですね!
今回も発売日買いで間違いないことは保証します!!
※前作『カササギ殺人事件』の感想も書いているので、よければこちらからどうぞ!
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