Contents
とにかくゾンビの出現には目が点
夏合宿のためにやってきた紫湛荘の外で肝試しをすることになった映画研究会&ミステリ愛好会一行。
もうこの辺は完全に青春小説でしたねw 探偵少女の比留子とワトソン役の葉村は手を繋いじゃったりして。
と思ったらまさかのゾンビ集団登場。ゾンビですよゾンビ。確かに怪しげなバイオテロ集団の話が差し込まれていましたが、ゾンビて!
急激な世界観の変化に手を引っ張られてグイグイ強制的に進む感じが凄い。
ゾンビに襲われて一行は必死に紫湛荘へ戻ろうとしますが、この騒動の中で、神紅のホームズ、明智さんがゾンビにやられてしまう。比留子との推理合戦を期待していた読者としては驚きの展開でした…。
ゾンビに囲まれたことによるクローズドサークル
近くで行われていたロックフェス会場でのバイオテロにより観客がゾンビ化。そのゾンビ集団に襲われた一行。
この時点で数名は命を落としました。
そして一行は紫湛荘に立て籠もることに。まさかのゾンビが外にいることによるクローズドサークルの完成ですw この発想はなかった。
そして、この状況を利用して殺人を行おうと決意する犯人。
その通りに紫湛荘内で殺人事件が発生してしまいます。しかもゾンビと人の両方が関わったとしか考えられない方法で。なんだこの世界観。
密室殺人の真相も設定が活かされていて面白い
一つ目の殺人では、進藤が密室の中でゾンビに食い殺されているわけですが、どうやってゾンビが部屋に侵入したのかわからず、犯人である人間がゾンビがやったと見せかけるために食い殺しただの何だので、推理がかなり迷走します。
その真実が、進藤がゾンビに襲われた恋人、星川を皆に見つからないように匿って(ゾンビに襲われたらゾンビ化することは皆わかっているので、星川がゾンビに襲われたと知ったら皆に星川を殺されてしまうため)、部屋で看病していたところ、星川がついにゾンビになってしまい食い殺されてしまった(その後ベランダで犯人を見かけた星川ゾンビは柵を乗り越えて落下、部屋には死体だけになる)というのは好みの真相でした。最後の瞬間に口づけをしたっていうのもなかなかに切ないですね…。
哀愁漂う人間味豊かなセリフが上手い
私がこの本で感じたのが、立浪や葉村の、ちょっとメランコリックな発言の味がいいなということでした。物語の間に挟まれる箸休めとしてはかなり好み。
特に犯人がわかったあとの葉村の感情を表したセリフはかなり好きだったなぁ。せき止められない感情が溢れ出てくるような感じが。ああいう勢いは情緒的で好きです。
唯一、比留子のキャラクターが苦手だった
この作品でちょっと合わなかったのが比留子のキャラクター。どうもラノベヒロイン系は苦手なのです。
小柄で黒髪ロング、清楚な服装、性格は純粋で、男をドキっとさせる隙のある仕草多数、実は小柄な割にグラマラス、何故か主人公にベタベタ。
ってもうこのパターン多すぎや!下半身狙いすぎだって!!
正直二次元系のヒロインが理想なのはわかる、わかるんだけどミステリーでそれはいいかな…って思ってしまうのよね。この辺のバランスは難しいわな…。
テロパートの掘り下げは次回作に続くか…?
巻末の鮎川哲也賞書評で北村薫先生が書かれていたように、紫湛荘での殺人とバイオテロが同じ土俵で解決に持って行かれる構成を期待していた方も多かったのかもしれませんが、このバイオテロに関しては、今作では完全にクローズドサークルを作るための材料でしかありませんでした。
しかしこの作品のエピローグでは、このバイオテロの調査からまた物語が始まるような予感を感じさせましたね。
こんな感じで作品内の事件がどんどんリンクしていくことになれば、めちゃくちゃ面白いシリーズになりそうな予感がします。
ただ今作は純粋にミステリとして読むと並であり、パニックホラー系の奇抜な設定との合わせ技が見事な故の高評価なので、次回作のハードルは高いかもしれない…。
この作品の登場人物の雰囲気が好きなら有栖川有栖の学生アリスシリーズもイケそう
正直、葉村が最初アリスにしか見えなかった。笑
青春小説っぽい雰囲気といい、最初登場人物が揃うところはかなり近いイメージでしたね。
この作品の登場人物の雰囲気が好きなら絶対に読んで損はしないと思います。かなり名作揃いのシリーズなので。
こちらの記事でもおすすめしているので、是非どうぞ。
屍人荘の殺人は、私のベスト10にはちょっと入らなかったですが、充分すぎるほど楽しめました。これはおすすめできる作品です!