スポットライト 世紀のスクープの感想
難しい映画だったなぁ。
というのも、この話はただ単に「未解決事件を調査→暴く」という構図ではなく、教会・神父というものが一般市民にとってどれだけ重要な意味を持つのか、そしてその教会が忌まわしい罪を隠蔽しているという事実がどれだけショッキングなものであるのかということが重要なポイントになってきます。
これは我々日本人には心の底から共感できるような話ではないと思うんですよね。なので観る人によって大分印象が違ってくるんじゃないかなぁと。
でも、私はただのミステリ・サスペンス好きとしてこの映画を観に行ったのですが、それでも充分楽しめました。
虐待事件を起こした神父が『休職中』扱いになっていることを暴いて該当する神父を洗っていくシーンなどはやはりワクワクしましたし、虐待事件を調査していた心理療法士のサイプが『神父の6%が禁欲できずに事件を起こす可能性がある』と指摘し、舞台となっているボストンでも90人はいる計算になる(当初チームは13人を想定していた)という事実が発覚した時のゾッとする感じもよかったです。
911が起きて調査が一旦ストップになってしまうなどのトラブルはありましたが、映画的には話は途中で大きく折れる感じもなく(本来はもっと圧力がかかったりして大変だったんじゃないかと思ってしまいました)、無事に新聞を発行してエンディングを迎えました。
そんなこの映画の見どころは、話の展開よりもその心理描写にあったのではないかと思います。
教会の罪を暴くということにどれだけの意味があるのか。
「スクープ」として他社より先に記事を発信することを重要視するのか、それとも神父の罪を暴くだけでなく教会のシステムそのものに言及していくのか。
昔毎週のように教会に通っていたレゼンデス(マーク・ラファロ)が事件を枢機卿が黙認していた事実を知った後の「自分の中で何かが壊れてしまった」という激昂。教会で子どもたちの歌を聞いている時のあの表情。
実はかなり前に弁護士から事件に関して加害者の神父のリストを受け取っていたのに、当時記事のネタにすらせず無視して今まで気づきもしていなかったロビー(マイケル・キートン)が、今になってこの事件と向き合っていること、そして自分が被害者であったかもしれないというその複雑な心理。
などなど、どれもとても見応えがありました。特に演技が良かったなと感じたのがマイケル・キートン。マイケル・キートンは『バードマン』よりこの『スポットライト』のほうがいい演技をしていたように感じました。ラストシーンの表情とかすんごくよかった。
うん、難しい映画だったから私の頭では書くのが難しい。笑
でも、アカデミー作品賞は堅苦しすぎて苦手なものが多い中、これは普通に楽しめた作品でした。雰囲気で面白そうだと感じたならば映画館に足を運んでみてはいかがでしょう〜。