こんにちは!シュガーです。
Q.アガサ・クリスティのおすすめミステリは?
A.『そして誰もいなくなった』『アクロイド殺し』『オリエント急行殺人事件』『ABC殺人事件』…?
もうやめよう!!!
もうやめようよこういうのは!!!!!
決して上に挙げた作品をディスっているわけではありません。
ただ、アガサ・クリスティのミステリをたくさん読んでいる人が、ベスト5に上の有名作品すべてを入れることがあるでしょうか?
正直、ほぼないであろうと言い切ることができます。
それはなぜか。
それは、アガサ・クリスティのミステリの面白さってトリックや真相のインパクトにはないからです。(上の有名作品って全部インパクト系ですよね)
アガサ・クリスティが上手いのは、人間心理の描き方と、それによる人間模様、つまりドラマなんですよ。
もっと言えば、上のような有名作品って、クリスティ作品全体から見るとちょっと浮いてる存在なんですよね。ファンの方ならわかりますけど、特に『そして誰もいなくなった』はクリスティ作品の中でめちゃくちゃ浮いてますし異色です。
アガサ・クリスティの面白い作品って上の有名作品のように一言でおすすめするのは難しいんです。面白さを説明しようと思ったらだいたい動機や人間関係まで踏み込まなきゃいけないので。
というわけで今回は、誰でも作れるようなランキングではなく、あくまで私がガッツリ熱意を込めて主観まみれのベスト15を、作ってみようと思います!
三谷幸喜版のリメイクドラマが相当面白くて、アクロイド殺しのリメイク『黒井戸殺し』はぜひ観ていただきたいです!
FODで観ることができるので、ぜひ!
Contents
ちなみに、アガサ・クリスティ自身の自薦ベスト10はこれ!
アガサ・クリスティは自薦ベスト10も発表していて、それがこれらになります(順不同)。
- 『そして誰もいなくなった』
- 『アクロイド殺し』
- 『オリエント急行の殺人』
- 『予告殺人』
- 『火曜クラブ』
- 『ゼロ時間へ』
- 『終りなき夜に生れつく』
- 『ねじれた家』
- 『無実はさいなむ』
- 『動く指』
アガサ・クリスティのおすすめミステリベスト15
15位:『ねじれた家』
ねじれた家に住む心のねじれた老人が毒殺された。根性の曲がった家族と巨額の財産を遺して。内部の者の犯行と思われ、若い後妻、金に窮していた長男などが疑心暗鬼の目を向け合う。そんななか、恐るべき第二の事件が……マザー・グースを巧みに組み入れ、独特の不気味さを醸し出す童謡殺人。
シリーズ:探偵なし
アガサ・クリスティ作品の中では個人的に結構異色な作品。ですがクリスティの自薦ベスト10に入っているんですよね。
実は犯人のインパクトはクリスティ作品の中でもかなり強めで、未読なら読むことを強くおすすめしたい一作。衝撃の割に知名度が低いのでネタバレされてない人も多いでしょうし。ただ序盤中盤が退屈でリーダビリティが微妙なのが難点ですね。
某名作ミステリと話の流れが似ているので、ミステリファンなら読み比べも面白いかもしれません。(その話については映画『ねじれた家』の感想記事で述べています)
14位:『ナイルに死す』
美貌の資産家リネットと夫サイモンのハネムーンはナイル河をさかのぼる豪華客船の船上で暗転した。轟く一発の銃声。サイモンのかつての婚約者が銃を片手に二人をつけていたのだ。嫉妬に狂っての凶行か?……だが事件は意外な展開を見せる。船に乗り合わせたポアロが暴き出す意外な真相とは?
シリーズ:ポアロ
名作との呼び声高い『ナイルに死す』を14位に。
この作品はとにかくボリュームが強烈ですが、その分人間ドラマが重厚で抜群な面白さです。正直殺人がおまけに感じるレベル。冒頭のまえがきでクリスティも語っていますが、登場人物が本当にリアルに感じられます。クリスティ作品の面白さが十二分に発揮された作品としてはやはりこれは外せませんね。
ただ、やはりこれもクリスティ作品の特徴なんですが、重厚なドラマとこのボリュームを支える「ミステリ的面白さ」や「真相の意外性」が若干不足している感も否めません。面白いですが、惜しいと思わなくもない、そんな作品です。
この作品はAmazonのオーディオブックサービス、Audibleで聴くことができます。
13位:『無実はさいなむ』
資産家の義母を殺害した罪で獄に繋がれたジャッコは、懸命に無実を主張した。が、それもかなわず彼は獄中で死亡した。やがて、その二年後、一人の男が現われた。ジャッコの冤罪を証明する証拠をもっているというのだ。まもなくジャッコの完璧なアリバイが証明され、事態は混迷してゆく……。
シリーズ:探偵なし(ドラマ版はマープル)
私の中で、『葬儀を終えて』と並んで始まり方が素晴らしい作品がこちら。
一族が集まる屋敷の中で殺人が起き、その犯人として捕まったジャッコが獄中で死亡。
それで事件は全て終わったと思いきや、1年後、屋敷にジャッコのアリバイを証明できるという男が訪れて真犯人が罪を逃れているという疑念が渦巻き始める。
実はドナルド・サザーランド主演で『ドーバー海峡殺人事件』として映画化され、最近では3話のドラマとして新たに映像化されました。
そちらの新しいドラマ版が非常に面白いので一押しです。ただ動画配信サービスでは配信されていないのがつらいところ…。Amazonオリジナル作品っぽいしなんでプライムで配信しないんだろう…。
12位:『鏡は横にひび割れて』
新興住宅地が作られ、セント・メアリ・ミードの風景もどんどん変わってゆく。だがミス・マープルの好奇心だけはいつも変わらない。有名女優が村に引っ越してきて、いわくつきの家に住み始めた。その引っ越しパーティの席上、招待客が死亡してしまう。永遠の名老婦人探偵マープルが謎に挑む。
シリーズ:マープル
なぜあの大女優はあの時、凍りついたような表情を浮かべていたのか。
その謎の真相が全てといっていいこの作品。一度読んだら忘れられない衝撃をもたらしてくれます。
事件の動機「ホワイダニット」を解き明かす作品としては一級品であることは間違いありません。ミステリに求めるものはトリックや論理よりもドラマだという方には一押しの作品ですね。
11位:『死との約束』
「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ……」エルサレムを訪れていたポアロが耳にした男女の囁きはやがて死海の方へ消えていった。なぜこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか? そんな思いが現実となったように殺人は起こった。謎に包まれた死海を舞台に、ポアロの慧眼が真実を暴く。
シリーズ:ポアロ
過去に『死海殺人事件』として映画化もされた作品。(『白昼の悪魔』は地中海殺人事件、『ナイルに死す』はナイル殺人事件として映画化されました。どれも旅情あるミステリという点で共通していますね)
あまりいうとネタバレになってしまうのでやはり難しいですが、リーダビリティ(読みやすさ)とミスリードが見事な作品です。
とにかくボイントン夫人が嫌なババァすぎるというのと、その嫌なババァから家族を救ってやろうという始まり方が面白くて事件が起こるまでのドラマを一気に読ませてくれます。ただ恋愛部分は正直微妙かな…w
ちなみにスーシェ版のドラマではひどい改悪がされていました。なんで原作の面白さをふっとばすようなあんな改変したんだろう…。
10位:『オリエント急行の殺人』
真冬の欧州を走る豪華列車オリエント急行には、国籍も身分も様々な乗客が乗り込んでいた。奇妙な雰囲気に包まれたその車内で、いわくありげな老富豪が無残な刺殺体で発見される。偶然乗り合わせた名探偵ポアロが捜査に乗り出すが、すべての乗客には完璧なアリバイが……ミステリの魅力が詰まった永遠の名作。
シリーズ:ポアロ
超有名作で私の大好きな作品でもあるんですが、ここにランクイン。
理由として、この作品は正直、もはや映像版のほうがいい出来だなと感じているからです。原作は聞き込みばかりで味気なく終わり方もあっさりしているのでこのくらいの位置かなと。
原作はあの有名な真相1本勝負という感じのまっすぐなミステリ作品なんですが、映像化ではその舞台の美しさと、人間ドラマを更に強化してよりいい作品に仕上がっていると思います。
映像化は今となっては本当に多いですが、必見なのはアルバート・フィニー主演の映画『オリエント急行殺人事件』と、スーシェ版のドラマ『オリエント急行の殺人』でしょう。
特に後者の物語解釈は本当に素晴らしい。私同様にあれを絶賛している人は多いんじゃないでしょうか。
予想を遥かに越える重さ、そしてこの作品の本質となるべき部分を見事に新解釈した名作です。この作品が好きなら絶対に観るべきだと断言します。原作もあそこまで踏み込んでいればさらなる名作になっただろうなと。
スーシェ版のドラマ『オリエント急行の殺人』はU-NEXTで見ることができます。1ヶ月無料なのでぜひ見てみてください!
9位:『ゼロ時間へ』
残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかった――人の命を奪う魔の瞬間ゼロ時間に向け、着々と進行する綿密で周到な計画とは?ミステリの常識を覆したと高い評価を得た野心作。
シリーズ:探偵なし(バトル警視、ドラマ版はマープル)
この作品は、アガサ・クリスティのミステリの特徴、そして面白さを一言で表していると思います。
つまり、殺人が起こる「ゼロ時間」に向かって、人間模様に変化が起こり、感情が揺れ動き、そしてついに殺しに至る。そのドラマこそが重要であるということ。
それをテーマとして描いた作品がこの『ゼロ時間へ』であり、それはクリスティの作品の特徴そのものだと思います。
これだけの説明では、尖ったところのない普通のミステリと思われるかもしれません。でももちろんそんなことはありません。この作品は、殺人の臨界点である「ゼロ時間」までの過程にとことんスポットを当てた、かなり特徴のある、またミステリとして驚きも大きい作品です。
やはりネタバレを避けて書くのは不可能なんですが、アガサ・クリスティ作品の中では超有名作品群に次ぐ知名度がある名作です。
8位:『そして誰もいなくなった』
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく! 強烈なサスペンスに彩られた最高傑作!
シリーズ:探偵なし
クリスティの超有名作品で、各ミステリランキングで必ず最上位にいるこの作品ですが、私の評価は今現在だとこのあたりになります。
理由は一言で説明できます。
2回読めば、もう充分だと感じるからです。
まぁこんなのほとんどの作品に言えることかもしれませんがw,特にこの作品は、次々と人が死ぬサスペンスフルでスピード感あふれる展開、そして意外な真相に特化されていて、人間模様や登場人物には特に魅力がありません(全員犯罪者みたいなものだから当たり前ですが)。
しかも、内容としてはもう人が死にまくるのみ。なので、新しく映像化されたりしてそれを見ても、もう特に面白いと感じなくなってしまってるんですよね。新しい発見がもうないので。(場面といえばほとんど人が死ぬところですからね)
なのでこの作品は、未読であるなら必読。そして真相を知ってから2回目の読み返しではかなり楽しめますが、そこにたどり着いてしまうともういいかなという感想です。
クリスティはこの作品がこれだけ評価されてることについてどう思ったんだろう。個人的にはクリスティにとってのベストとは程遠いのではないかと感じます。(とはいえ自薦ベスト10には入れていたのでそれなりに満足しているとは思いますがw)
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7位:『ポケットにライ麦を』
投資信託会社社長の毒殺事件を皮切りにフォテスキュー家で起こった三つの殺人事件。その中に、ミス・マープルが仕込んだ若いメイドが、洗濯バサミで鼻を挟まれた絞殺死体で発見された事件があった。義憤に駆られたマープルが、犯人に鉄槌を下す! マザー・グースに材を取った中期の傑作。
シリーズ:マープル
「捜査に私情を挟むな!」とはよく聴くセリフですが、やはり読んでいる側としては私情が多少挟まっている方が燃えるというものですよね。
今作はまさにそれ。後に”復讐の女神”と呼ばれるようになるミス・マープルが怒り、犯人に鉄槌を下すために現場に乗り込んでくるという作品です。
事件自体もクリスティお得意の「マザーグース」の詩を使った見立て連続殺人でどんどん読ませます。
そしてこの作品の素晴らしいところは結末の余韻。この点ではクリスティ作品の中でもトップクラスの素晴らしさです。
6位:『ABC殺人事件』
ポアロのもとに届いた予告状のとおり、Aで始まる地名の町で、Aの頭文字の老婆が殺された。現場には不気味にABC鉄道案内が残されていた。まもなく、第二、第三の挑戦状が届き、Bの地でBの頭文字の娘が、Cの地でCの頭文字の紳士が殺され……。
シリーズ:ポアロ
私個人の好みでは、アガサ・クリスティの超有名作品の中で一番”今でも”面白いと感じるのはこの『ABC殺人事件』です。
やはりこのサスペンスフルな展開と挑戦状、不気味な雰囲気が漂うA・B・C氏視点の章、予告されてから殺人が起こる恐ろしさなど、ページをめくる手が止まらない構成が素晴らしく、何度読んでも楽しめます。
あと、やはりABC順に殺人を犯した理由の(ミステリ的)素晴らしさには言及せずにはいられませんね。可能かどうかというところにツッコミどころはあるのですが、名作であることは疑いようがありません。
この作品はAmazonのオーディオブックサービス、Audibleで聴くことができます。
5位:『葬儀を終えて』
リチャードは殺されたんじゃなかったの――アバネシー家の当主リチャードの葬儀が終わり、その遺言公開の席上、末の妹のコーラが口にした言葉。すべてはその一言がきっかけだった。 翌日、コーラが惨殺死体で発見される。要請を受けて調査に乗り出したポアロが一族の葛藤の中に見たものとは?
シリーズ:ポアロ
これはクリスティの作品の中でも特にストーリーの掴みが素晴らしい作品です。(個人的にはこの作品と『無実はさいなむ』の始まり方が2TOPです)
富豪が死に、その遺言が発表される場になって「でも上手く揉み消したわね、だってリチャードは殺されたんでしょう?」という爆弾発言が飛び出す。そしてその発言の主が惨殺される。
素晴らしい始まり方じゃないですか?この発言がミステリとして及ぼす影響力も非常に大きく、この始まり方から事件の全体像を想像することは完全に不可能です。
面白い展開、意外な犯人、驚きのトリック、ミステリに求めるものはすべて高水準に満たした名作です。
4位:『終わりなき夜に生れつく』
誰が言い出したのか、その土地は呪われた〈ジプシーが丘〉と呼ばれていた。だが、僕は魅了された。なんとしてでもここに住みたい。そしてその場所で、僕はひとりの女性と出会った。彼女と僕は恋に落ち、やがて……クリスティーが自らのベストにも選出した自信作。サスペンスとロマンスに満ちた傑作。
シリーズ:探偵なし
この作品はネタバレなしで語るのは難しいんですが、ボカして書くとミステリの某超有名作品の上位互換に感じております。
名前は前者のほうが超有名なんですが、面白さではこちらが上回っていると思うということは、まさにこれは隠れた名作だということ。未読の方はぜひ読んでみてください。
話の内容としては、ラブストーリー+サスペンス+オカルトといった感じで、不穏な雰囲気が全編に漂っていて先が気になる一気読み系です。未読なら必ず読みましょう。
クリスティを多く読んでいるといろいろな意味で既視感が出てくるかと思いますが、仕上がりの完成度はその既視感ならではなのかなと。言い方を変えれば集大成ということですね。
3位:『カーテン』
ヘイスティングズは親友ポアロの招待で懐かしきスタイルズ荘を訪れた。老いて病床にある名探偵は、過去に起きた何のつながりもなさそうな五件の殺人事件を示す。その影に真犯人Xが存在する。しかもそのXはここ、スタイルズ荘にいるというのだ……全盛期に執筆され長らく封印されてきた衝撃の問題作。
シリーズ:ポアロ
一度読んだら忘れることができないポアロ最後の事件。
ポアロとヘイスティングスの最初の事件があったスタイルズ荘に再び舞い戻り、「人の心を誘導して殺人を犯させて楽しんでいる」という最悪の敵と対峙します。
ついに最後の事件で、自分の手を汚さない、法で裁くことができない殺人者が登場するんです。
この最悪の敵にポアロがどう挑むのか、そしてシリーズにどう幕を下ろすのか。未読の方は必読の一作です。
ネタバレなしにはどうにも語ることができないので頑張ってボカして書きますが、
ミステリの名作シリーズ物で、同じような性質を持つ「最後の事件」があるんですが、あちらと比べるとこの『カーテン』の出来は圧倒的にいいなと感じさせられます。
とにかく全編通して暗い雰囲気が漂うダークな作品ですが、ポアロ物をいくつか読んだら必ず読んでほしい作品です。
2位:『五匹の子豚』
16年前、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁判にかけられ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのです……娘の依頼に心を動かされたポアロは、事件の再調査に着手する。当時の関係者の証言を丹念に集める調査の末に、ポアロが探り当てる事件の真相とは?
シリーズ:ポアロ
1位と迷いましたが、2位に『五匹の子豚』をランクインさせました。
クリスティ作品によくある「過去の事件を捜査する」タイプの話です。
事件がもう終わっていて犯人と思われる人物も処刑されてしまっているので、ポアロが関係者に当時の話を手記にしてまとめるよう依頼し、それぞれの手記の内容から隠された真実を探るという構成になっています。
この手記にクリスティの才能が遺憾なく発揮されていて、書く人間によって全く違った点に注目していたり、事実に異なる印象を抱いていたりというところが面白い。まさに人間模様の面白さです。
そして読者はポアロ同様に手記から推理することになるので、探偵と平等な情報が与えられているという本格推理的な面白さも兼ね備えています。
事件の真相も非常に複雑で情緒深いものになっていて、心に残る結末になっています。
完成度の高さはクリスティ作品の中でも圧倒的。知名度は低いですが、クリスティファンなら必ずといっていいほど高評価な名作です。
1位:『春にして君を離れ』
優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。
シリーズ:探偵なし
これを1位にするのは流石に躊躇しました。
何故かというと、探偵も、殺し、ましてや事件もこの作品には不在だからです。
ただ1人の主婦が、旅行先で足止めを食らって自分の人生を見つめ直す、ただそれだけの話なんです。
ミステリ好きのあなた、これを聞いてテンションが下がったんじゃないでしょうか。
でも、アガサ・クリスティーのベスト1を挙げろと言われたら、この作品を推したくなります。
それくらい抜群に出来がいいのです。上のあらすじでテンションが下がった人にも自信を持って勧められるくらい、面白いんですよ。
この作品は本当にクリスティじゃなきゃ絶対書けないと思うし、そこらへんのミステリよりよっぽど読者の心を抉ります。読後感も余韻が強烈です。
また、ミステリじゃないことがプラスに働いている点かもしれないのですが、減点したくなるようなところがほとんどありません。完成度が圧倒的に高いんですよね。
こんなあらすじだから読まないでもいいや、後回しでいいや、と思う方が多いかもしれません。
でもこれは読んだほうがいいよと強くおすすめします。特にクリスティの作品が好きなのであれば、これをスルーするのは絶対にありえないと断言しておきます。
人によって好きなクリスティ作品は大きく異なる
ベスト15、めちゃくちゃ作るのに苦労しました。
クリスティ作品は特に順位をつけるのが難しいですね…。「これが面白い」「これがまぁまぁ」とかの分け方ならそこそこ簡単にやれそうなんですが、細かくランキングするのは大変でした。
このベスト15からギリギリ漏れた作品は『アクロイド殺し』『検察側の証人』『杉の柩』『ホロー荘の殺人』『パディントン発4時50分』『白昼の悪魔』あたりですが、これらの作品をベスト級に挙げる人もきっと多いハズ。
クリスティはやっぱり人によって好きな作品が異なるので、語り合うのも面白いです。
クリスティ作品はめちゃくちゃ読みやすくて、1日で読めちゃう作品もかなり多いので、ぜひ知らない作品は読んでみてほしいですね〜。
また、クリスティ作品はAmazonのオーディオブックサービスのAudible(オーディブル)で『そして誰もいなくなった』『オリエント急行の殺人』『ABC殺人事件』『ナイルに死す』などを聴くことができまして、無料体験で1冊無料で聴けますからこれらの作品が無料で全編楽しめちゃいます。
私自身はすでにオーディブル有料会員のヘビーユーザーですので、参考までにこちらもよければ御覧下さい。
アガサ・クリスティのミステリは他の作家のミステリと比べて面白いのか?
さらに一歩ぶっちゃけて、ミステリ全体から観てアガサ・クリスティ作品は面白いのか?というところも書いておこうと思います。
もちろん個人の好みによるところがかなり大きいのですが、
犯人の意外性・トリック・どんでん返しという面で見ると、他の作家のミステリのほうが面白いのは間違いないと思います。
ではクリスティの面白さはどこにあるのかというと、それはもう繰り返しになりますが登場人物の人間性、そして人間模様が面白いということに尽きます。
この対比として1番わかりやすいのがエラリー・クイーンのミステリかなと。
あちらは非常に論理的で推理シーンが抜群に面白く、犯人の意外性とそこに至るまでのプロセスは本当に抜群に面白いですが、小説としてみると冗長で読みにくさが目立ちます。
それに対し、クリスティは本当に読みやすいんですよ。作品によっては1日で余裕で読めますし、ちょっとした場面も面白くて退屈さを感じさせません。その分、ポアロやマープルの推理に唸らされるといったこともほとんどないですが、気軽に読書できます。
クリスティ以外の作家の作品も気になるという方は、ぜひ私が好きなミステリを5万字以上の特大ボリュームでまとめたこちらの記事もあわせて御覧下さい。多分面白い一冊に出会えると思います!
クリスティ作品は映像で楽しむのも超おすすめ
クリスティ作品は、ポアロ物とマープル物はかなり映像化されているので、本よりそちらで楽しむのも超超超おすすめです。(実際に私はポアロはDVDで全部持っていてよく観ています)
幸いポアロもマープルもU-NEXT(1ヶ月無料)で観ることができます。1ヶ月無料なので未体験の方は頑張れば無料で全部観れちゃいますね!
ちょっとアレンジされたり犯人が変わってしまっている作品も稀にありますが、この記事で紹介したものだと1位の『春にして君を離れ』以外はなんらかの形で映像化されている(春にして〜はミステリではないのである意味当然)ので、ぜひ楽しんでみてください。