ミステリ

久しぶりに綾辻行人著『十角館の殺人』を読んだらアンフェアに感じた話【感想】

こんにちは!シュガーです。

最近、綾辻さんの十角館の殺人を久しぶりに読みました。

この本は古典海外ミステリばっかり読んでいていた私が国内ミステリに興味を持つきっかけになった作品で、先日書いた

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の私が決めるミステリベスト10にも入れようかとても迷った作品です。(綾辻さんからは時計館を入れました。時計館に次いで好きなのがこの十角館です。)

あの記事のおかげで久しぶりに十角館を読む気になったんですが、

読む前の私の感想の予想は

「やっぱ十角館面白いわ!見事に『そして誰もいなくなった』を現代風に昇華させてる!やっぱトップ10入れよう!」

だったんです。

が、読んだ後実際にどう思ったかというと…。

「意外とアンフェアなところがあるな。もやもやする…」

というものでした。ここからはネタバレ全開なのでご注意下さい!

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十角館、意外とアンフェア?

十角館の殺人といえば、

「ヴァン・ダインです」

の一言がいつまでたっても忘れられないどんでん返し系ミステリ。

 

私も初めて読んだときはこの一言で背筋がゾクゾクっと来たのを覚えていまして、あんな経験をしたのはこの「十角館の殺人」が唯一でした。(特に新装改訂版ではページをめくった次の1行になっているのが見事ですよね。)

 

では、この十角館の殺人を本格ミステリらしく、犯人がわかった状態で読むとどうなるのか?

その結果が、今回のアンフェアという感想でした。

 

ミステリにおけるフェア、アンフェアはアクロイド殺しなどの論争が有名ですが、私はそこまで語るつもりは全くありません。

私にとってのミステリのアンフェアは、ミステリにおける「ミスリード」が、許せるレベルを越えてしまった場合です。この十角館では、少し越えてしまったなぁと。

①彼らはもちろん知るすべもなかった。

一つ目は、2日目・本土の最後です。

島田、江南、守須の3人が角島の連続殺人について意見を交わしあったシーンのラスト。

彼らはもちろん知るすべもなかった。

いくつかの街と海を隔てたその島を舞台に、殺意の爆発点は間近まで迫っていたのである。

『十角館の殺人』新装改訂版、183頁

これです。

知るすべもないどころか、思いっきり犯人がこの中にいるので、この記述はおかしいと思うんですよね。流石に。

②アガサの死体を見つけた時の反応

二つ目がアガサの死体を見つけた時の反応です。

「ひいっ」

喉を締め付けられたような掠れた悲鳴を、ヴァンは発した。全身に戦慄が走った。足がすくみあがった。

『十角館の殺人』新装改訂版、311頁

 

「あ……あ……」

右手で口を押さえて、ヴァンは立ち尽くした。

『十角館の殺人』新装改訂版、311頁

 

そうしてがくがくと震えやまぬ足を、ポウの部屋に向かって必死で引きずった。

『十角館の殺人』新装改訂版、311頁

 

お前がやったんやないか。

 

 

これに関しては一応最後に説明があります。

まず、アガサの殺害方法は2つの内1つの口紅に毒薬を塗るという不安定なもので、いつその口紅を使うかわからなかった(しかも普段使う色と違う方に塗ってしまったため)。

つまり、犯人にとっても死体を発見したことは普通に驚きだということですね。

あとは、もう殺人に嫌気が差していて、この時ちょうどその感情が限界に達していたという。それが吐き気と足の震えの原因。

 

つまり、これは明確にアンフェアではなく、フェアな表現であることは間違いありません。

しかし、ちょっとこれはミスリードとしてはやりすぎじゃないんかなぁ。こういうのは個人の感じ方次第なんでしょうね。

完全なアウトではもちろんないにせよ、初見の読者からするとこれが犯人の反応とはとても捉えられないし…。ここまでして煙にまかないでもよかった気がします。

でもやっぱり1日で読んでしまった

そんなこんなで、最初に思っていた満足感が得られなかった『十角館の殺人』ですが、

やっぱり1日で読んでしまったのでこの引き込まれる展開は流石だなと感じました。

時計館が1番好きなのは変わらないですが、結局2番目は十角館かな…。迷路館よりはそれでもやっぱり好きだなという結論に至りました。

 

ついに次で館シリーズもおそらく最終作である10作目なので、めちゃくちゃ楽しみです。

まだタイトルもわかりませんが、ベスト1になるといいな…!