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『カササギ殺人事件』ネタバレ対策あり感想!最強の作中作ミステリが登場してしまった…!

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作中作という形をとったミステリの中では圧倒的な完成度だと思う

この『カササギ殺人事件』は作中作の手法を使ったミステリですが、このタイプでは圧倒的な完成度だと感じました。

この理由をいくつか挙げていきたいと思います。

作中作『カササギ殺人事件』が1冊のミステリとして成り立ちそうなクオリティ

まず、作中作である『カササギ殺人事件』の出来の良さが、もはや作中作の枠を越えているということ。

正直、上巻の最後の方ではこれが作中作だということを忘れて普通に楽しんで読んでました。私と同じような方がきっと多いと思います。(だからこそ、上巻のいい引きの後の下巻の1行目の衝撃&一気に引き込まれましたよね)

 

私はクリスティのミステリが大好きですし、ポワロのドラマは全てDVDを持っているくらいですから、あの牧歌的な風景はスッと頭の中に入ってきましたし、なんなら相棒役のジェイムズ・フレイザーの名前がドラマのヘイスティングス役のヒュー・フレイザーから来てるんじゃないかって気づけてしまったタイプの読者です。

そりゃたまらないですよねw

下巻で明かされる、作中作と現実のリンクに興奮

「こう来たか…!これはすごいな…!」

と思わされたのはやはり下巻に入ってからでしょう。

なんと『カササギ殺人事件』の最終章、つまり解決編の原稿がなくなっており、しかも原作者が死んだという知らせが入ります。

状況から見てどう見ても自殺なんですが、原作者アラン・コンウェイの周囲の人たちを見るとどう見ても『カササギ殺人事件』の元ネタになっている。しかもアラン自体は『カササギ殺人事件』で被害者になったサー・マグナスに似ている。

 

これは自殺ではなく殺人事件なのではないか…?

 

現実世界でもう一つのミステリが始まった瞬間です。

この作品がすごいところは、作中作タイプと言っても1つの小さなミステリが内包されているというわけではなく、完全に2つ同規模のミステリが両立されているということ。1冊で2度楽しめるってこの作品のためにある言葉だったんだなと。

しかもその2つが密接に関わっているんですからね。これはもうたまらない。

最後に明かされる、『カササギ殺人事件』の最終章がなくなっていた理由がすごい

物語の最後の最後で、『カササギ殺人事件』の最終章がなくなっていた理由が明かされます。

これがすごいんですよ。

『カササギ殺人事件』は名探偵アティカス・ピュントシリーズの最終章なのですが、かの名探偵ポワロ同様、もう死期が近づいていたんですよね。

ピュントは、薬で自分の命を絶とうとしていました。

そしてその遺言を、相棒のジェイムズ・フレイザーに残していたんです。

 

 

その遺言をアラン・コンウェイの遺言として利用する(自殺に見せかける)ために、『カササギ殺人事件』の最終章がなくなっていたんです!

 

 

これ、すごいでしょう。

何がすごいって、めっちゃ使い古されてるんですよね。あぁ、そのタイプのトリックねって。いろんなミステリもので見たことある気がしますよこれ。

 

なのに今作ではそれが判明したときの衝撃度がまるで違います。

ここで作中作というこの作品の手法が圧倒的に活きてくるんですよね。だいたいこのトリックが使われている作品って、その元の原稿の内容を読者や視聴者はアバウトにしか知らないので。

でもこの作品は違います。読者全員が、最終章まで全部読んでいるんですから。

まず、読者は上巻の時点でピュントの死期が近いことを知っている。

そして何より、最終章の原稿がなくなったのは、それが何かしら現実の事件の犯人を表しているからこそ消えたんじゃないかと。

上巻があったからこそ、かなりミスリードされるんですよね。

 

これが判明してみると単純明快。その原稿でアランの死を殺人から自殺に見せかけるため。そしてその原稿が作品として発表されてしまうと、遺書の流用に気づかれてしまうため。

 

めっちゃ単純。なのに上手く見逃してしまう。

これはもうプロットの見事さとしか言いようがないですよ。凄いなと思いました。

これだけミステリファンへのプレゼントとして推されている一作だけに、メッセージ性に疑問が

この作品、とにかくミステリファンがニヤリとできる素晴らしい作品だったんですが、

だからこそ自分の中で1つ疑問だったことがあるんですよね。

それが、この作品の真相でもある、

  • 大ヒットを連発していたアラン・コンウェイがミステリ嫌いであったこと
  • アナグラムで、探偵の名前に不謹慎な名前を付けていたこと

なんですよ。

ミステリファンが大喜びするような作品で、探偵作家が実はミステリが嫌いであったり、探偵が嫌いであるという話がめちゃくちゃ出てくるんですよね。しかもアラン・コンウェイに関してはアナグラムであれだけバカにしているわけですから。

でも、上巻のようにそんな人があれだけ面白いミステリを書けてしまう。

私は真相がわかった後に読む、『カササギ殺人事件』の最終章を素直に楽しんで読めなかったんですよね。書いている人がそんな気持ちで書いているんですから。

 

私自身がこれを不快に思ったとかではまったくなくて、どうしてこういう話にしたんだろうって純粋に疑問で。

この話で何が言いたかったんだろうというと大げさですが、なんでこんな話にしたんだろうなぁ。

考えすぎかな。

『カササギ殺人事件』はぜひ映画化してほしい

そんなにめちゃくちゃ数読んでるわけではありませんが、最近の海外ミステリって面白いものが多くて本当に楽しいです。

最近読んだ中では一番好みだったのは『そしてミランダを殺す』ですが、この『カササギ殺人事件』もめちゃくちゃ良かったなぁと。

そして特に、映画化してほしいなって思いました。上巻は本当にポワロの海外ドラマ風として見れるし、そこから一気に現代に戻ってくる感じ、映像としてのインパクト大きくて面白いんじゃないかなぁって思います。

ん~本当に良い読書体験でした!!次は何読もうかな~。

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