『9人の翻訳家たち』は実はフーダニットではなく、ホワイダニットの作品であるところがキモ
物語は、シェルターでの翻訳作業を経てメンバーが交流していったり、中にはデダリュスの登場人物を自身に投影するようなファンがいたりと人間模様を描きながら展開していきます。
そして中盤に差し掛かるとデダリュスの序盤が流出、9人の翻訳家はシェルターに閉じ込められ、犯人探しへと移行していきます。
ですが、意外や意外、その犯人についてはあっさりと観客に明かされてしまいます。そして原稿を盗んだ方法も。
しかしこの翻訳家たちは皆デダリュスの大ファンですから、発売前に原稿を盗んで最初から全て読みたいと思っても全く疑問点はないですよね。
そしてついに、出版社社長の努力(脅迫)もむなしくデダリュスの最終巻は全て流出してしまいます。
動機にメッセージ性がある作品は面白い法則
この事件の動機はなかなか意外なところにあって、それがこの『9人の翻訳家たち』の一番面白いところになっています。
この映画のテーマそのものがこの動機にあるといってもいいくらいで、なかなかいいメッセージ性が込められていると私は思いました。この動機の部分が微妙だったら70点くらいの評価になっていたかもしれません。
なぜ犯人はデダリュスを流出させようとしたのか。犯人は本当に大金が欲しかったのか。
その動機はぜひ劇場で確かめていただきたいと思います。
最後に、私がこの作品で物凄く気に入ったセリフがあるので紹介します。
「ページを開くと、世界が溢れ出す」
素晴らしい言葉だなと。私は読書が本当に大好きなので、『デダリュス』が気になって仕方ありませんでした。
ページを開くと世界が溢れ出すような作品、読みたいなぁ……。
ハリー・ポッターシリーズってまさにこの言葉の通り、世界が溢れ出していたなと思ったのでした。