こんにちは!シュガーです。
アンソニー・ホロヴィッツのホーソーンシリーズ第二作、『その裁きは死』を早速読みました!
今作も本当に面白かったですよ!
※今回からサブチャンネルで、動画も同時に作成していくことにしました!
過去に読んだ面白いミステリもどんどん紹介していくので、ぜひチャンネル登録よろしくお願いいたします!
Contents
作者:アンソニー・ホロヴィッツについてのかんたんな紹介
カササギ殺人事件でミステリ各賞を総なめにしたあと、ホーソーンシリーズ第一作『メインテーマは殺人』でも4冠を達成。
今最も注目すべき海外ミステリ作家はアンソニー・ホロヴィッツですよね。
さて、今作『その裁きは死』はメインテーマは殺人に続く、ホーソーンシリーズの2作目。
超正統派の謎解きミステリです。
『その裁きは死』あらすじ
離婚専門の有名弁護士がワインボトルで殴られた後、割れた破片で喉を切られ殺された。
これは前日、裁判の相手方だった人気作家が口走った脅しに酷似した殺され方だった。
現場にはペンキで書かれた”182”のメッセージ。
事件の直前、被害者は電話をしており、電話の相手が最後に聞いた言葉は、来客者に対しての「もう遅いのに」。
まだ夜8時にも関わらず、なぜこのようなことを言ったのか。
この言葉の本当の意味は何だったのか。
そして”182”の意味は。
複雑に人間関係が絡み合う王道の謎解きミステリです。
ここからは、ネタバレ込で各伏線の解説と、私の感想を述べていきたいと思います。
未読でこの作品のトリックを知りたくないという方は、ここで離脱をお願いいたします。
伏線・トリック解説
この小説の面白さの肝は、ホーソーンが語るように「事件の全体を把握する」というところにあるかと思います。
事件の全貌を把握する上で、もっとも鍵となるのが、
弁護士リチャードが殺された翌日に電車に轢かれて死亡したグレゴリーが、他殺なのか、自殺なのか、それとも事故なのかという点。
死んだリチャードとグレゴリーは、6年前にもうひとりの友人チャールズと一緒に洞窟探検に行き、そこでチャールズが死んだという事件に関わっています。
つまり、グレゴリーがどのように死んだかどうかで、事件の動機、つまり全貌が大きく変わってくるというわけです。
語り手であるホロヴィッツは、
グレゴリーが死ぬ直前に妻に電話をかけて食事の約束をしたこと、
笑顔の自撮り写真を撮っていたこと、
電車に乗る前に長編の小説を買っていたことから自殺ではなく事故だったと判断し、事件の動機は6年前の洞窟とは別の所にあると推理しました。
しかし真相は、グレゴリーは自殺。
先程挙げた行動は全て、保険金を妻に残すため、自殺と思われないようにするための工作でした。
この謎を解くための伏線が、まずグレゴリーが購入した長編小説に関して、
165ページに記述がある、「シリーズの第3巻を購入した」ということと、
202ページ、部屋にはテレビ、暖炉、ソファ、ピアノくらいしかなく他にはなにもないという描写、つまり本の1冊も本棚も部屋にないのに突然シリーズの3作目を買ったのは不自然だということです。
そしてグレゴリーが自殺であるなら事件の動機はやはり6年前の洞窟の一件にあると考えられ、犯人は洞窟で死亡したチャールズの妻、ダヴィーナかということになるのですが、
ここでリチャードの最後の発言、夜8時にもかかわらず来客者に「もう遅いのに」と言っていたのがポイントとなり、犯人は実はダヴィーナの息子であるコリンであるという結論に達します。
このように復習してみると、やっぱり王道路線ど真ん中の謎解きミステリという感じで、伏線の散りばめ方が素晴らしいですよね。
ホロヴィッツが見逃していた手がかりとは
76ページに、こんなセリフがあります。
「この時点で、私はすでに手がかりを3つ見逃し、2つ読み違えていた」
この手がかりとはなんなのか。読み返してピックアップしてみました。
正確な答えが提示されていないので違う可能性はあるのですが、おそらくこれらかと思います。
まず、3つの見逃しについて、
1つ目は「スペンサーの車の匂い」です。
このシーンではホーソーンのみが匂いを嗅いでいて、後にスペンサーの不倫相手と同じ匂いがすることからスペンサーの裏の行動を突き止めていました。
2つ目は「コーラの瓶」です。
夜の来客だったのにも関わらず、酒ではなくコーラのみが置いてあったこと。これが犯人がダヴィーナではなく息子のコリンだと決定する手がかりの1つになりました。最もクリティカルな手がかりだったといえます。
3つ目は、「もう遅いのに」の重要な意味です。
この時点ではホロヴィッツは特に気に留めてもおらず、スペンサーがついた嘘かと推測していましたが、これも犯人を特定するためのクリティカルな手がかりといえます。
読み違えた2つの手がかりは、
1つ目は、花壇の折れたガマ。
これはホロヴィッツは女性のヒールで潰したと推測し、最終的には傘の跡だという結論をだしていましたが、これはコリンが倒した自転車のペダルで折れたものでした。
2つ目は、懐中電灯。
目撃情報があった懐中電灯ですが、満月でライトが不要だったのにも関わらず、ホロヴィッツは最後まで理由を付けてこの懐中電灯に固執してしまいました。
事実はもちろん、コリンの自転車のライトです。
『その裁きは死』総合評価
『この裁きは死』のわたしの総合評価は、
87点
です。
満足度としては全く文句なしの出来なのですが、個人的にはカササギ殺人事件のような派手で面白いギミックがある作品のほうが好みだということで、この点数になりました。
ただ、前作「メインテーマは殺人」同様、謎解きミステリとしては一級品の出来で、めちゃくちゃ面白いことは間違いなく、これからもこのシリーズは発売日に必ず買うと思います。
このホーソーンシリーズは全10作とのことですが、まだ8作も読めるなんて幸せすぎますね。
次は来年にカササギ殺人事件のアティカス・ピュントシリーズの2作目が出るそうなので、こちらも超楽しみです。
『その裁きは死』が好きだという方にむけてのおすすめ作品紹介
この裁きは死、が面白かったという方に向けて、おすすめの作品を1つ紹介します。
今回のおすすめは
アガサ・クリスティの『葬儀を終えて』
です。
今回おすすめするにあたって重視した要素は、
海外ミステリの中で、伏線の張り方が絶妙な作品というところでチョイスしてみました。
クリスティ作品は古典ですが、今でも海外古典のなかでは圧倒的に読みやすいです。
この『葬儀を終えて』は私含めクリスティ作品の中でも隠れファンが多い名作なので、ぜひ手にとって観てください。